【セミナー書き起こし後編】起業家の学習による事業創造とは 〜成人発達理論を土台とした起業家と事業の成長〜

2022.11.10 NEWS

起業家自身の器で、企業の事業は決まるとよく言われますが、どのようにすれば、起業家は学習し、そして事業は発展するのでしょうか?

創業し起業家として社会と向き合いながら、「環境と自我の相互作用」を実践者としての立場と、起業全般を観察する「観察者」としての2つの視点で歩み、現在はベンチャー投資・支援会社の運営を通じて、実践・支援を展開されている諸藤周平さんにお話を伺った、対談セミナーの記事です。

後編の記事となります。前編はこちら

■登壇者紹介
諸藤 周平
株式会社REAPRA(以下、Reapra)代表取締役社長
1977年生まれ。九州大学経済学部卒業。 株式会社エス・エム・エス(東証一部上場)の創業者であり、11年間にわたり代表取締役社長として同社の東証一部上場、アジア展開など成長を牽引。同社退任後、2015年より、シンガポールにてREAPRA PTE.LTD.を創業。アジアを中心に、数多くのビジネスをみずから立ち上げる事業グループを形成すると同時に、ベンチャーキャピタルとして投資活動もおこなう。個人としても創業フェーズの企業に投資し多くの起業家を支援している。

嶋内 秀之
株式会社アントレプレナーファクトリー
代表取締役神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)。オリックス株式会社にて6年間国内営業の後、7年間ベンチャー投資を担当。 2009年にアントレプレナーファクトリー設立。ラーニングテクノロジーと動画を用いて、地域や時間を問わずに学習できる動画サービスを企画し、3000コンテンツを保有し事業展開する。 2009年より12年間立命館大学及び大学院で講師を担当、現在はMBAコースでアントレプレナーシップ論を担当する。

【告知】起業家の学習と成長にフォーカスした講座プログラムのご案内

オンライン講座「起業長の学習と成長から事業を生み出す方法」

“企業は、起業家の器で決まる”とよく言われますが、では一体、どのようにすれば、その器は変化し、その器はどのように事業に影響するのでしょうか?

本プログラムは、ベンチャー投資の実務や成人発達理論などをベースに、
起業家の学習がどのように事業創造に繋がっていくのかをテーマとします。

起業家自身の内面的な成長と長期的にフォーカスしつつ伸びゆく市場領域を選定し、顕在事業でキャッシュ・インサイトを獲得し、自己資本を原資に事業拡大をする考え方や具体的な実践方法を習得することができます。

事前学習動画、オンラインコンサルティングセッション、メンバー限定の専用SNSを活用し、地域を問わず学習できる講座です。

11/18(金)に講座のミニ体験会がありますので、是非お越しください。

○講座ミニ体験会申込みはこちらから

○講座詳細はこちらから

 

Reapra創業。試行錯誤から見えた、視座が高くても成功しない理由

嶋内 秀之(以下、嶋内):創業し、上場され、そして退任。理想的に思えますが、お辞めになってからベンチャー支援の側に回って、Reapra社を立ち上げられています。

おそらく、一度会社を立ち上げ、葛藤を通じて考えられてきたからこそ、見えた課題があるのではと思います。

ここからは、起業家側の課題と支援者側の課題についてお話を聞いていきたいと思うのですが、Reapra社をスタートされたきっかけですね。

ベンチャーキャピタルという形を通じて、世の中にアプローチしていこうと思われた、理由をお伺いできますか。

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Reapra諸藤代表

諸藤 周平(以下、諸藤):そうですね。後ろ髪を引かれていたので、まず戻りたくならないようにしようと思いました。新卒でキーエンスを選んだのと同じ感覚です。それで、数年見ても市場が不透明すぎるところ、言語が違うところに一旦身を置こうと。

それが東南アジアでした。

初めは投資家みたいなことをやろうと思っていたんですが、半年もしないうちにつまらないと思い、それでまた自分で株式会社を作ろうとしたのですが、何をすればいいかが分からなくて。

でも考えていたら、何か1つの産業を選ばなければいけないという思い込みや、やってみたけど大きくならないのは嫌だという自分のこだわりが見えてきたりしました。

最終的にReapra(リサーチアンドプラクティス)という、「産業を創ること自体の研究実践」というテーマであれば、お金がなくなっても後悔がないなと、シンガポールに半年ぐらい滞在しながらこの辺のビジョンが固まってきました。ただ当時は、起業当初はガラクタだった自分でも上手くいったので、何か有望な領域で、一定の視座やスキル、倫理感がある人がやれば、全部が上手くいかなくても一定数の企業は成功するだろうと思っていました。

僕は産業を「次世代の生活を良くする経済の塊」と定義してるんですけど、今は大きくなくてもいいので、長い時間をかけて産業になりそうなものを、一定のスキルの人とやっていくというアプローチを当時していたんですね。

でも、これが大きな間違いでした。そこがなぜ間違っているのかを、最初の4・5年は試行錯誤していたと思ってます。

嶋内:なるほど。伸びゆく領域と視座の高い人がいれば上手くいくっていうのは、今でも多くの人が信じていることじゃないかと思いますが、違うのではと思われたんですね。

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諸藤:正確に言うと、将来大きな産業になりそうなんだけど、複雑すぎて時間をかけて学習しなきゃいけないっていうフィールドで産業を作ることに、自分のらしさもあるし興味もあります。

多くの産業は偶発で起こったり、1つの政治的な意思決定だったり、創造性の高いプロダクトで解決することから始まりますよね。

株式会社的には、それでリスクを取った人が金銭を得ていいんだ、みたいな成り立ちもあると思うんで、そのような背景で作られてるものがいっぱいあると思っています。

でもそこでは勝てないっていうのが、自己認識の「らしさ」でしたので、興味はありません。

だから「産業の創り方」という汎用的なものではなく、世代を跨ぐ時間軸の相手とやりたかった。

産業ができるところの研究実践をしてるのがReapraなんで、「課題を見つけたから、一気に資金調達して走り抜けるんだ」っていうのは、やりようがない。

自分の興味関心は、領域として長期時間軸での解決が必要な社会課題になっていて、経営自体を次の世代にわたサイトいけなくて、株式会社でやれそうに思えるけど、何か1つのプロダクトで済むようなほど単純じゃない。どんな領域として広がっていくかが不透明だからこそ、試行錯誤しながらの学習が必要になるところです。

ただ対象となる人の視座が高くても、その人が領域に執着できないと短期的な結果を求めたり、苦しくなると逃げて他人に渡そうとしがちなんですね。

当時はそれぞれに学習の癖があることや、伸びそうなのに学習しない理由が分からなかった。ほとんどのケースは、領域より学習の癖や、必要な学習様式を獲得できないことが原因だったんですが、かみ合わないと気づいては、それを分解していく作業をしていきました。

嶋内:ただ視座が高いだけじゃなく、執着して長く続けようとできるかが重要だという話でしょうか。そこに適性があるか、ということですか?

諸藤:将来世代を跨ぐような社会課題がある、解決していないということは、既知の学習を集めたスキルでは解決できない、ということですよね。
1つ1つの体系的な知識を学ぶことは、役には立っても問題の解決には足りないんですね。

一方で、一般的な知能の高さやスキルの高さは、既知のものをどれだけ再現性を高く、効率的にやれるかで見られているので、視座の高さとイコールではなくて、「できると思っている」という期待値にすぎない。

あなたは大物になるって言われたことで視座が上がっている人もいれば、生きづらくて視座が高くなった人もいます。ただ学習命題がフィットしてるかという点は、ほとんどすり合わされていなかったので、どこかで行き詰まる状態が頻出したっていうのが、自分たちがこれまで支援してきて得た経験だったと感じています。

 

成人発達理論の利点とアジア圏ならではの留意点

嶋内:ありがとうございます。そういった経験を経て、今、色々なチャレンジをされている中で、成人発達理論との出会いがあったんですね。実際に理論を現場に適用してみて、いかがだったでしょうか。

諸藤:成人発達理論は、Reapraの支援を整理するのに非常に有用なフレームでした。ただ活用している一方で、中心にして扱うものでもないのかなとも思っています。

成人発達理論:「私たちの知性や能力が一生をかけて成長を遂げていく」という考えのもと、人の発達プロセスや発達メカニズムを解明する学問。発達心理学という心理学領域の一部に位置付けられている。

https://www.authentic-a.com/adult-development-theory

良かったポイントは、その人の視座についての見立てですね。

Reapraでいうと、世代を跨ぐ時間軸で社会課題を解決する。その視座を実践的に体得するためには、視座に合ったリーダーシップが必要ですよね。それが成人発達理論のフレームを通すことで、変遷の一般的な流れが見えやすくなる。

自分で言うと、ものすごく低い視座が、社会的な命題でうまく足場がかかって一気に上がる経験をした。その時にどこが動いて、どこが動かなかったとか、それでも残る癖は何かとか、主観では把握しきれない部分を捉え直すことができました。

視座がどうやって、どんなきっかけで動いていくのか、その過程で起こり得る摩擦や対処の仕方が見えやすくなる。一定の時間をかけて作られた理論として、産業を作るリーダーや会社の組織育成にも活用できるフレームだと思っています。

成人発達理論の限界という点では、今の自分の視座はここら辺にあって、これだけやれば発達レベルがこれぐらい上がるとか、細かく刻まれている発達段階モデルを、先が不透明な社会課題を解決するリーダーに本当に適用できるか?という疑問が残ります。

そもそも成人発達理論自体が、キリスト教などをベースにする人たちが作ったもので、基本的には1つの神を信じて捧げれば幸せになるっていう世界観から見ているものだと思うんですよね。

今のReapraは日本およびアジアで展開しているんですが、日本人におけるその手の価値観は、八百万(やおよろず)、社会のどこにも、どんなものにも神が宿るというもので、その前提で僕らは意思決定をしている。垂直的に、それもスパイラルで発達段階が上がる世界観自体が、しっくりこないかもしれないという印象があります。

そもそも数値化するとか、細かく刻んでいくことがアジア人にフィットするのか。その点では、あまり過剰に適用するものでもないのかもしれないと思っているので、今のReapraではあくまで参照するぐらいのレベル感で活用しています。

 

種の生存戦略に根ざす「執着心」に伴走する

嶋内:ありがとうございます。諸藤さんは起業家の自己喪失について、よくインタビューで話されている印象があるのですが、それだけを聞くと、正直「俺、鬱になるの嫌だな」と思うこともあります。
この起業家の自己喪失と変容ですが、どう学習と繋がっていくのでしょうか。

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諸藤:はい。うまく説明できるか分かりませんが、変容と学習の繋がりには、成功するかどうかではなく、Reapraと起業家が共同学習する場自体の状態が関係していると思っています。

「喪失」という言葉が適切か分かりませんが、今までの生き方にモヤモヤを感じていたり、実際に生き方を変えざるを得ないタイミングが、学習との相性がいいと思っていて。

今の私たちの支援体系は、自分を見つめながら会社のコーポレートミッションの達成や社会課題の解決を目指していくものです。その前提で、どんな人のどういう状態だと上手く行きやすいのか。

その人のらしさの奥には「人と深く広く繋がりたい」っていう思いがあると僕は思っていて、子どもが欲しいとか、友達はいらないとかいう言葉ではなく、その衝動が、種としての生存戦略の重要なキーになっている気がするんです。

あらゆる種が、種を保存し、繁栄することを求める。その中の人間の持つ、生き残り戦略のひとつとして、人間同士が深く広く繋がるっていうのがあるのかなと。

これが株式会社でうまくワークしているのか、社会を良くしているのかという命題はあります。ただ一旦、僕ら人間がそこに駆動されている前提に立つと、その人の遺伝的な気質や、産み落とされた地理的条件などの色々なことが、その人の何かの「らしさ」に影響を与えていて、新たな環境に立つ度に上書きされ続ける。それがその人らしさを作っているんだ、と思うんですよね。

その理解がないままだと、「これをやりたい」っていう思いを見つけても、それが実は表層の動機だったり、あまり執着できないものだったりすることに気づけない。

視座だけが高くなった理由が分かっていない、というのもそれと同じところがあって。「視座が高くないと自分は捨てられる」、という原始的な体験から来てる人もいれば、自分はこのスキルを引っ張ったときに心地よかったっていう体験が関係している人もいる。でも、もっと深いところには、「人と深く広く繋がりたい」っていう思いがある。

いずれにせよ、少なくとも次の世代の社会課題を解決するぐらいの時間軸で、株式会社のリーダーとして課題に取り組む場合には、この「らしさ」に根ざす「執着心」みたいなもの、「私にはこういう『らしさ』があって、だからこのテーマがある」っていう原始的な起点から今に至るまでの解釈に基づくストーリーが必要なんじゃないかと。

「どうしても」防災のない社会にしたいとか、「どうしても」ジェンダーギャップをビジネスを通して変えたいとか、昨日今日起こったことではなくて、かなりプリミティブなところからの「らしさ」としてそういうものがある。それが社会課題と重なっていて、株式会社ができそうだったときに、一緒に学習をして、投資をする。

本人が悩んでいるタイミングや、既に生きづらくなっているタイミングに、この構造から掘り下げていくと、セッション自体が深くなる傾向があるように思っていて。有名な会社で、稼げば幸せになれると思ったのに幸せじゃない、なんでこんなに年収ばかり気にしていたんだろう、ってなった後だと、生き方を変えてでもそれに向き合いたいって流れになりやすい。

言葉が適切か分からないですが、それは「喪失」とも言えるんじゃないかと。新しいテーマに取り組むには、ゼロベースで学び方を変える必要があるのですが、生まれ変わるタイミングだと、自分の癖と向き合って、赤ちゃんのように柔軟に学び直せる。これを活かすのが今のRepraの支援ケイパビリティなのかなって思っています。

嶋内:なるほど。ロスみたいな感覚ですかね。そういう感覚をお持ちのタイミングで、創業時から支援されていくような感じですか。

諸藤:そうですね。今は、そういう風に生きづらさを抱えてる人と対話をして、結果として創業に向かう人を伴走するのがメインですね。最初は、領域とかプロダクトとかはない方が相性がいいなと感じています。

嶋内:なるほど。学習に適したタイミングを活かして支援していくんですね。お話ありがとうございました。

 

【告知】起業家の学習と成長にフォーカスした講座プログラムのご案内

オンライン講座「起業家の学習と成長から事業を生み出す方法」

“企業は、起業家の器で決まる”とよく言われますが、では一体、どのようにすれば、その器は変化し、その器はどのように事業に影響するのでしょうか?

本プログラムは、ベンチャー投資の実務や成人発達理論などをベースに、
起業家の学習がどのように事業創造に繋がっていくのかをテーマとします。

起業家自身の内面的な成長と長期的にフォーカスしつつ伸びゆく市場領域を選定し、顕在事業でキャッシュ・インサイトを獲得し、自己資本を原資に事業拡大をする考え方や具体的な実践方法を習得することができます。

事前学習動画、オンラインコンサルティングセッション、メンバー限定の専用SNSを活用し、地域を問わず学習できる講座です。

11/18(金)に講座のミニ体験会がありますので、是非お越しください。

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